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「その仕事、全部やめてみよう」をCTOの目線で読む

クレディセゾンCTOの小野 和俊さんから「その仕事、全部やめてみよう」 を献本いただいた。

自分にとって小野さんと言えば、未踏スーパークリエイターであり、エンジニアの多くが一度は読んだことがあるであろう「小野和俊のブログ」の中の人であり、スタートアップ創業を経て大企業のCTOをされている、伝説のエンジニアの一人だ。昨年からは、日本CTO協会で理事としてご一緒させていただいており、その熱量と経験にいつも圧倒されている。

前記の日本CTO協会の理事のみなさんが、非常にするどい書評を書かれていてこちらも大変勉強になる。

自分は少し別の角度から本書についてコメントしたい。

本質を抽出する

仕事柄、他社のCTOの方とディスカッションすることが多い。ディスカッションの内容は多岐に渡る。例えば、利用している技術、今後注力していきたい技術、エンジニア組織、採用、評価、ビジネスサイドとの関係性などだ。これらのディスカッションは実に学びが多い。

一方で、矛盾したような言い方となるが、その議論で知り得た知識や取り組みの多くは(残念ながら)参考にならない。もう少し正確にいうと、知り得た知識や取り組みを自社でそのまま適用しても大抵機能しないという意味だ。これは会社のフェーズや事業内容、規模、組織体系、扱っている技術、事業コンディション、マーケットサイズや市場環境、その全てが違うからだと思っている。 だからディスカッションで得た知識の根っこの部分を見抜くこと、本質が何かを抽出する ことが必要である。そして抽出された本質がそもそも自社にマッチするかを見極めて、さらにそれが最大限レバレッジが効くようにする、という作業を必要とする。

「本質を抽出する」と7文字で書くのは簡単だ。これが実に難しくて、CTOを4年務めていてもまだまだだと感じることが多い。ネタバレしてしまうので内容はここには書かないが、本書で一番びっくりしたのは、本質への追求のアプローチが序章の最初の最初で来るところ。ここは思わず3回読んでしまった。

シンプルでキャッチーなフレーズ

本書では「エンジニア風林火山」「バイモーダル戦略」「ラストマン戦略」といった、シンプルだけどキャッチーな言葉がいくつかある。これらはもともと前述の小野さんのブログでも書かれているものであるが、一度読んだり聞いたりしたらなかなか忘れることができない。

CTOとして何か大きな技術的なイニシアチブを動かそうとするとき、従業員にそのイニシアチブを理解してもらわないとならないし、少なくとも多くの従業員にそのイニシアチブの名前だけでもまず覚えてもらう必要がある。技術的なイニシアチブを実行するときについ技術用語を並べたくもなるが、サービスプロダクト開発に関わるメンバーはエンジニアだけではないから、平易な言葉で、忘れることなく、しかもそれが本質な意味を合わせもつものが要求される。だからシンプルでキャッチーなフレーズを作り出すアプローチは重要だ。シンプルにすればするほど本質を鋭く表せないといけないから。

ちょうど、いまヤフーではサービス開発環境を刷新する全社横断のイニシアチブを実行中だが、このプロジェクト名の考え方も小野さんのブログを見たことがきっかけだった。

本書ではまだまだシンプルでキャッチーなフレーズが出てくるが、どれも本質を鋭く表現していると思う。さらにいうと本質は大抵味気ないものになりやすい。これを小野さん調でわかりやすく、すーっと入って来やすいストーリーに仕上がっているように感じた。だから読みやすい。ネタバレしちゃうので続きはどうぞ手にとってもらえると!

まとめ

本書を最後まで読んだ感想は、ずばり現場の匂いがするということだ。CTOというポジションだけでなく多くのエンジニアを勇気づける一冊だと思う。また読み直そうと思う。